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竹の子書房用 とよね

竹の子書房用【絵が先 古城の怪異】参加作品 古城の怪異〈6〉 著者:とよね

古城の怪異〈6〉 三章 晩夏――2/2

 8.果てしなき……

 百人の兵士が夜を燃やす。松明の炎が森にわけ入り、村になだれ込み、百万の生物の眠りと闇を赤く薙ぎ払う様子を、馬上の若く美しき双子が見ている。
 レグルスは背後から腕を回すポラリスの平静を感じている。怯えてはいない。そのこと自体に彼は不意に怯える。おれの後ろに居るのは誰かとレグルスは考える。
 おれは城を捨てる。幽閉された父と、野心家の母親、未来に統べるべきであった民と、豊かな生活と名誉を。罪深きことである。すべてを捨てて越える山の向こうに、何も知っているものがなかったら? 何もかもが違う――人間の世界ではなかったら。地獄、異形の者どもの、永劫の罰の世界であったら。
 そして彼は、ただ一つ選び取ったものを見ようとする。見て、それが、自分が知っているまま変わっていない事を確かめようとする。
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竹の子書房用【絵が先 古城の怪異】参加作品 古城の怪異〈5〉 著者:とよね

古城の怪異〈5〉 『三章 晩夏』――1/2

 0.承前

 目を覚ます。
「ママ?」
 固いベッド。薄い毛布。起き上がった子供は混乱する。僕は――私は? 私? いいや、僕だ――僕は誰だ?
「ママ」
 空と窓とを隔てる木々が、強風にざわめく。木の葉の影が激しく揺れ動く。そうだ、この音で目を覚ました。木々の声、丈低き夏草のさざめきと、それを踏み分ける足音。
 ママが帰ってきた! やっと帰ってきたんだ!
 子供は部屋を飛び出す。
「ママ!」

竹の子書房用 とよね

竹の子書房用【絵が先 古城の怪異】参加作品 古城の怪異〈4〉 著者:とよね

古城の怪異〈4〉 二章 その夏(――3/3)

 11.正当防衛です、ミス・エーカー

 テーブルにつき、やれやれ、久しぶりの食事だと思うけれど、心持ちは安堵からほど遠い。向かいに座るキャリーのことが気になるのだ。
 泥がこびりつき、絡み合った長い髪。生々しい擦り傷が残る腕や顔。細い指がもつスプーンは、泥水をすくっている。
 キャリーのスープ皿には石と草と泥水しか入っていない。と思ったら、リジルの皿もそうだ。これでは食べられない。
「どうして、ここにいるの?」
 リジルは問うが、キャリーは長い前髪の向こうに顔を隠してすすり泣くだけだ。
「ねえ、キャリー。あなたは誰? なぜお城にいるの? お城の外にはちゃんとしたご飯があるのよ」
 消え入りそうな声で嗚咽していたキャリーが、顎を上げ、水色の目でリジルを見た。白目が充血し、涙をためている。

竹の子書房用 とよね

竹の子書房用【絵が先 古城の怪異】参加作品 古城の怪異〈2〉 著者:とよね

古城の怪異〈2〉 二章 その夏(――1/3)


1. 真夜中の逃走

 黒い水のように、森が広がっていた。森は複雑な地形を覆い、満月の下にある大地を深い闇に変えていた。
 その闇の僅かな白い裂け目を、一台の車の光が照らし、また森の闇に消える。
 その裂け目は、崖だ。
 崖を見下ろすように、城が月を背に建っていた。
 風が雲を運んできた。その雲が月にかかり、完全に隠してしまった時、車が破壊される痛ましい音が、闇の森から響いた。

竹の子書房用 とよね

竹の子書房クリスマス企画『O Tannenbaum』 とよね著


 ナカヨシは自分の妻が馬鹿であるとは信じたくなかったので、意味が分からない振りをして聞き返した。
「アサリを殺したくないの」
 いや、意味は分かる。
 少なくとも文章にはなっている。
 ナカヨシは妻を殴ろうかと思ったが、やめた。
 そんなことをしてヒステリーを起こされては堪らない。
 こいつはどうも、近頃それを狙っている節があるからな――俺が恥を掻くことを。
 そう考え、妻の青い顔を凝視した。
「何だと?」
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黒実 操

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