お話の、あるところ。

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読みきり作品 吉野慧

投稿作品『時雨』 著者:吉野慧

 汚い茸や筍が散らかされて、草木がすすり泣く寂しい山道を下って村まで戻ってみると、やはりわたしの家だけ雨が降っていなかった。

この村は、どこもあばら家のようなものである。
薄い板を貼りあわせた、山奥の川に打ち捨てられた木箱のようなものなのだ。
疾風がまけば、すぐに尾根を越えて、それぞれが悲しそうに遠くへばら撒かれてもおかしくはない。

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読みきり作品 吉野慧

投稿作品『見えない花』 著者:吉野慧


 砂漠のような畑を耕す二、三人の男たちがいた。

どれだけ土を掘り返しても、肥料を加えてみても、なにかが育つとはとても思えないのである。
さらりとした肌触りの、寝転べば身体を包みこんで、深い土の下まで運んでくれそうな畑である。

どうして彼らは土地を育み続けるのか。

読みきり作品 吉野慧

投稿作品『骨』 著者:吉野慧


風が、とてもゆっくりと部屋の隅へと延びていく。
自分の場所がなくなるようで、なんだか窮屈な気持ちになった。

窓の外を眺めると、雨が忙しなく地面を叩きつけていた。
細かな粒が土を穿ち、埃を巻く光景は恐ろしかった。

読みきり作品 吉野慧

投稿作品『彗星』 著者:吉野慧


 星くずの混じった波にのって、女が流されてきた。

 きらきらした彗星のよく流れる爽やかな夜に、海辺に打ち上げられた女は、ぼくの家に住むことになった。はじめに女を見つけた、ぼくの所以外に、行くあてもなかった。
どこから流されてきたのか尋ねても、明瞭としなかった。
深い海の底だと言う時もあれば、遠い空の更に遠くだと答える日もあった。
それでも、大きな地震で起きた、ひどい津波で流されてきたことだけは確かなようで、地震について尋ねると、大きく澄んだ黒い瞳を潤わせて、必ず窓に肘をついて海の彼方に視線を背けるのだった。

読みきり作品 吉野慧

投稿作品『沼』 著者:吉野慧


 朝起きると、お母様が死んでいた。
家の中では線香のにおいが漂っていた。遠い親戚の人や、お父様の会社の人たちが集まってきた。
「お母様に、お別れを言いなさい」
「いやだいやだ」
僕は泣きじゃくって、棺桶の中で静かに寝ているお母様に顔を向けることが出来なかった。
 
プロフィール

黒実 操

Author:黒実 操
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