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テスト用投稿作品

投稿作品『空漠の地平Ⅰ』-序章-(テスト投稿) 著者:豊原ね子

空漠の地平Ⅰ
―虚構(ユメ)の隙間で会いましょう―

第一話 ヒトサライ坂
第二話 亡霊たち
第三話 空腹な因果
第四話 暴力の荒野
第五話 生まれた世界
第六話 知らない恐怖
第七話 鬼ごっこ
第八話 夜の旅

   三つの嫌な序章

―1―

『環くんがこうなったきっかけについて、君は何か知らないかな』
 女……例の、女の人を見てからです。
『その時君たちは何をしていたの?』
 自宅の庭にいました。縁側から、家に上がろうとしていました。
『何時くらいだったかな』
 八時か九時……。
『どうしてそんな時間に庭に出ていたのかな』
 弟が叱られたんです。お仕置きで締め出されていたから僕が迎えに行ったんです。
『女の人は何処から来たのかな』
 分かりません。
『どんな女の人だった?』
 着物で、髪が……いえ、何でもありません……。
『顔は見た?』
 覚えてません。
『もう少しその女の人の話をしようか。何でもいいから言ってごらん。どんなつまらないことでもいいから』
 覚えてません。
『どうして君はその女の人が原因だと思うのかな?』
 分かりません。
『君はその時何を感じたのかな? 怖かった?』
 ……覚えてません。












勾玉の形となりて弟よ眠れ因果の土の形代


  ―2―

「すみません」男が、庭を掘り続けている。野良着の男だ。
「すみません!」
 千種はもう少し、腹に力を入れて呼んだ。男がようやく腕を止めた。シャベルを土に突き立てて、麦藁帽子のつばを押し上げる。首に巻いたタオルで浅黒い顔を拭いた。もう老人だった。
「初めまして。戸坂の二番地に越してきた雛川と申します。両親に代わって挨拶に来ました。あの、これ」
「あぁ、新しく入った人かね、そうかねそうかね」
「つまらない物ですが……」
 千種は遠慮がちに正方形の小さな庭に踏みこんだ。石鹸の小箱を渡すと、老人は初めて見る物かのように、細めた眼で散々見詰め、ズボンの尻ポケットに押しこんだ。
「どうもな。でもここにゃもう、誰も住んどらんよ」
「本当ですか」
「取り上げ婆が一人でおったけども、だいぶん前に死んじまってな」
「……そうですか」
「でも、まぁええわ。アンタよう帰って来たわ」
「えっ?」
「昔は、うちのミエコがよう世話になったなぁ」
「あの……人違いじゃないですか? 私、ここに来るの初めてです」
 老人は地面に視線を落としたままだ。
 居たたまれなくなって、千種も土に目を移した。屈めばすっぽり入れそうな穴が、見れば庭中掘り返されている。
「何を、してらっしゃるんですか?」
「探し物だよ。あの婆さん、ここらに埋めたはずなんだがなぁ」
 そう言ってまた、千種から少し離れてシャベルを庭に突き立てる。
「何を探しているんですか?」
「ミエコ」













晩秋は苦界の涯(はたて)風饐える間引き小屋にも銀杏(いちょう)ひとひら


  ―3―

 鼻歌が聞こえた。
意識が覚醒する。顔を上げると夢のように、鼻歌はやんでしまった。長い髪を指に絡ませたまま眠っていたらしい。指をテーブルに下ろす。水音だけ細く続いていた。
和室に西日が差している。団地の角部屋を照らすものはそれだけ。女は座椅子から立った。
音は風呂場から聞こえてくる。すりガラスを細く開けると、蛇口から細い水が浴槽に流れ落ちるのが見えた。
「か……な……」
 浴槽の中で誰かが呼んでいる。
「かな……」
 女は忍び足で浴槽に近付き、覗きこんだ。
 胴体と頭だけの男が、赤い毛布にくるまれて投げこまれていた。もう水が、青紫の唇の両端まできている。顔の横におしゃぶりが浮いている。
 それが丸く見開いた目で、
 かな
 と呼ぶ。
 彼女は慌てて蛇口を捻った。
 しめきった途端、大音量の電話のベルと共に、大量の水が蛇口から溢れた。 











棄てられた死体は深夜笑い出す 錆びついた闇 錆びついた塵

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