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『夢見る病気』豊原ね子

夢見る病気 みちしるべの〈8〉

〈ご挨拶とお知らせ~『百合と雪』について〉
 こんにちは!
 今回に限ってまともに挨拶させていただいました、とよねでございます。

 このたびイラストレーターの目黒詔子先生のご作品『百合の雪』に、電子書籍化を前提として私の小説を付けさせていただくこととなりました。つきましては「夢見る病気」の更新を一時的に停止し、「百合の雪」を優先して公開してまいります。
 全5分割となる予定です。
 それでは、よろしくお願いします。


〈みちしるべ〉

 序章 眠れる人は眠れ
 間章 エヴェレット船団

 第一章 Deus ex Machina(第一枝 冬)
 第二章 Reginita(第十二枝 春

 第三章 Utopia(第七枝 夏)
    第一話 接点
    第二話 交差
    第三話 雷火
    第四話 神話の子
    第五話 ハトは死んだ ←いまここ
    第六話 矛盾負荷
    第七話 はやすぎる方舟
    第八話 帰りこぬネコ世界

 第四章 Entangle(第一枝 秋)

 間章 パラレルホール渡航船団
 終章 世界全図は眠い

 断章 オルガレータへようこそⅠ~Ⅷ


〈私の知らないところ〉

 2、3年前のことだが、その頃カフェでアルバイトをしていた。レジで注文して会計を済ませ、その場で飲み物を受け取って座席に移動してもらうという形式のカフェだった。ドトールやスタバと同じシステムだ。ドトールでもスタバでもないが。
 レジの横には調理台があり、私はその時、調理台とフロアの間の仕切りに立っていた。
 仕切りに一番近い座席に老婆が座っていた。60代後半か、それ以上だと思う。老婆はコーヒーを飲みながらじっと私を見つめていたが、やがて空になったコーヒーカップとトレイを食器返却口に持ってきた。私を凝視したまま。老婆の目は嬉しそうにキラキラと輝き、幸せそうに笑っている。
 そして私の前に立って言った。

「あなた、××(私の本名)さんでしょ。ああ、こんな所にいたのね」

 他にも「やっぱり××さんだ」「やっと会えた」と言っていたと思う。彼女は私を知っていて、私に会いたいと願っていたようだった。しかし私がトレイを受け取ったままきょとんとしていると、
「私のことが分からない?」
 と訊き、最終的に「いいのよ。気にしないで」と言ってお店を出て行った。

 彼女は私の何を知っていて、私は彼女に何をしたというのだろう。
 私の何が彼女を幸せにしたというのだろうか。

 カフェの扉を押し開けて白昼の路上に出て行った老婆の小さな後姿、ただならぬキラキラした存在感、あの幸福感に輝く目と表情は、今でもたまに思い出す。
 その度に「何だったんだろうなぁ?」と不思議に思う。


〈友人の実家が農家なのだが、土地を接収された〉

 小学校以来の友人Aの実家が、缶ジュース農家である。
 よく電車とバスを乗り継いで友人たちとともにお邪魔し、暗くなるまで遊び呆けたものだ。Aのお祖父さんもお祖母さんも朗らかなお人柄で、丹精こめて育てた缶ジュースを目の前でもぎ、私たちにくれた。田舎の暑い夏空を走りまわった私たちの喉には、獲れたての缶ジュースはこの世のものとも思えぬ美味さだった。
 その缶ジュース農場が、県に接収されることとなった。
 賢明な読者諸氏のことだから、すでにお察しの方もおられるだろう。そう。隣の三重県との県境争いが激化し、愛知県は県境付近の土地を地雷原として作り変えることに決めたのだ。
 農業を生きがいとしてきたAのお祖父さん、お祖母さんは気落ちし、すっかり別人のように老けこんでしまった。
 もちろん手当てはつくよ。住居や生活の保障だってある程度はあるよ。
 でもね、お金の問題じゃないんだよ。
 もう老夫婦が愛と時間をつぎ込んできた缶ジュース農場はない。
 もぎたての缶ジュース。獲れたての缶ジュース。
 もう全てなくなってしまった。
 おもいきって自動販売機の栽培にも取り組んでみようかと熱く語っていた、その矢先なのに。
 思い出の土地は、亡命者や夜な夜な忍びこむ三重県の忍者集団の命を奪う、嘆きの土地になってしまったのさ。


〈みなしき君の狂気日記〉

「作者は登場人物を愛していないのか!」と思われそうなので先に言いましょう。それは誤解だ。愛したらこうなったのだ。

[5月2日(月)]上着に吐瀉をされた。嫌がらせに違いない。困惑するのも癪なのでそのまま着た。

[5月3日(火)]上履きの中に画鋲がセットされていた。そのまま履く。

[5月4日(水)]血が出た。

[5月5日(木)]妹が初潮を迎えたとの事で母上が赤飯を炊いたが、生臭くてとても食えたものではなかった。まさか経血で炊いたのではあるまいな。

[5月6日(金)]家庭菜園では美しくてかわいいきせりたちゃんがたくさん実っている。もいで食う。

[5月8日(日)]しかし、美しくてかわいいきせりたちゃんの肥料は俺の死体なのだ。俺が俺を食べている。……俺は誰だ?

[5月9日(月)]俺の家? 西日暮里だけど。

[5月10日(月)]ねこねこにゃんにゃん ねこねこにゃん 男が言うと気持ち悪いにゃん

[5月12日(木)]それにしても昨日は忙しかった……記憶が残っていない。

[5月13日(金)]野鳥にさえずられた。なぜだろう。このような仕打ちを受ける心当たりが何もない。

[5月14日(土)]やはり野鳥が俺を見てさえずる。『バーカ』と言っているのか。

[5月15日(日)]今日食ったナスは美しくてかわいいきせりたちゃんと同じ髪型であった。

[5月16日(月)]俺がミナシキに見えるか? 本当に? 俺をミナシキだと思うか? よく見てみろよ、ほら、ほら、ほら! ……ははははははは! ふははははははは!あー……はははははははははははは! 言うなよ。本当のことは言うなよ、絶対に。はははははははは!

[5月17日(火)]母上が何かにとりつかれた様に鍋を洗っている……五時間。

[5月198日(木)]外出中、妹がジュースを服にこぼした。風邪をひいてはいけないので路上で全部脱がす。俺の心遣いに感極まったのか妹は号泣していたぞ。ははは。

[5月22日(日)]明日は下々の者の暮らしの視察に行くのに、靴下を持参する。下々の者に足の臭いを覚えてもらうためだ。

[5月23日(月)]明日の視察にはクワを持っていこう。下々の者の家などを打撃するためだ。

[5月24日(火)]明日の市民たちの暮らしの視察には、弁当を持っていく。下々の中に飢えたる者がいたら、見せびらかしながら食うのだ。

[5月26日(水)]ファミリーマート輪廻の鯨店が開店するそうだ。これで便利になるな。

[5月27日(木)]「下々の者と交流を深めるためにファミリーマート輪廻の鯨店で働きたい」と妹が言い出し、姉上によってソファの裏側まで殴り飛ばされる。何故かかわいそうではない。

[5月28日(金)]ファミリーマート輪廻の鯨店が開店したので見に行く。店員の名札に「おの」と書いてあった。斧だと?

[5月31日(火)]妹が、先日姉に顔を殴られたせいで自分の誕生日会に出られないと泣いているが、心配するな、誕生日会などというは来ない。理由は聞くな。



Comment

みなしきさん…。

上の二つの短編で、ちょっとしんみりいい感じに熱くなった
私の純情を返してくださいwwwwww

みなしきさんの狂気日記…ヤンデレなのは作者なのかみなしきさん
なのか判断に困りますwwww って、ヤン…デレ? デレ?w
いっそこれは、ヤンヤンでいいのか? 新ジャンルすぎるだろw

なに言ってんのぉ~。

やだなあ~。
どこがヤんでるんですかぁ~。
デレデレじゃないですかぁ~~~(´∀`*)。
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