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竹の子書房用:黒実 操

【三面推理・自動車のマフラー赤く塗られる・探偵Side】黒実操著


 新聞は変わった。記者の魂は死に、広告主や日和見役員の天下。度重なる不祥事、捏造、パクリ記事。
 それでも俺は新聞を読む。
 これは三日前の東海道新聞の三面だ。さっき、公園のベンチから持って帰ってきたものだ。
 ほんの数行、箸休め的な記事が、この灰色の脳細胞に棘のように刺さり、疼く。
『自動車のマフラー赤く塗られる』
 些細な悪戯だと見逃されそうだが、違う。【警察は】と明記してある。これは正式な事件なのだ。
 紙面には限りがある。あまたの事件のどれを載せるか載せないか、その選別理由など、ふふ、読み流している一般人には、想像もつくまい。
 限りある紙面に、他の犯罪を差し置いてこれを載せたのは何故か。
 答えは簡単。『載せざるを得ない事情がある』。
 事件をおさらいすると、駐車中の自動車のマフラーが赤く塗られていた、ということだ。赤く、だ。赤である必然性。これはメッセージだ。
【赤】で連想するものはズバリ【血】。
もう一つ、【マフラー】も重要だ。赤く塗るなら、タイヤやバンパーでもいい。何故【マフラー】なのか。
 俺は最初、マフラーの位置、排気口で、非常に下品な推理を下してしまった。この恐ろしい、知恵者で稚気に満ちた犯行予告を成し遂げた者に、大変失礼なことをしてしまった。
 ここは素直に【マフラー】イコール【首巻き】だ。血の色、殺人の象徴【赤】と【首巻き】イコール首絞めの象徴【マフラー】が正解なのだ。
 更に、この日の東海道新聞三面、左端の特集記事を注視する。『頻発する通り魔について』。
 そうだ! 声に出して叫んだ。そうだ! これは悪戯を模した、通り魔殺人の予告なのだ!
 しかし確固たる犯行声明でもない限り、一新聞社がそれを憶測で書くことはできない。
 だからこそ、紙面にこの二つの記事を並べて載せた。
 優れた推理の才を持つ人間が、この含みに気付いてくれますようにとの、切なる願いが込められていたのだ!
 俺は、この健気な新聞社の思いを確かに受け取り、男泣きしていた。もう大丈夫、俺が、俺がしかと受け止めた。かくなる上は、必ずや警察に協力を申し出てこの犯人の野望を阻止し……。
 待て!
 原付のマフラーも赤く塗られていた?
 四輪だけではない?
 何故だ。何故原付まで。
 頭の切れる犯人だ。これにも含みがあるはずだ。それは新聞社も気付く、ある意味単純な……。
 あっ。
 マフラーの位置は、ナンバープレートの直ぐ側。まさか、そうか、ナンバーへの視線誘導……だ。
 駐車してある全部の車が赤く塗られたとは、書いていない。犯人によっての取捨選択。
 暗号だ。ナンバーを組み合わせて、声明文になる仕掛けだ。自動車だけでは字が合わず、原付も使ったんだ。
 数字の組み合わせ? それだと複雑過ぎる。平仮名だ。【あ】とか【い】とか数字の前に付いているあれだ。
 赤く塗られた車等の平仮名を並べると、犯行予定の場所か、被害者の名前になるはずだ。
 そうだ。
 ここまで含ませて、記者はこの記事を書いたんだ。貴重な一文でわざわざ原付の存在を知らせ、そして俺のような天才がそれに気づき、警察に進言することを祈って!
 記者の魂は、ここにあった。
――許してくれ。
 あいにく電話は未払いで止められていた。いや、こんな重大事だ。直接この事件の管轄の警察署に行こう。えーと、何処だ? 
 俺は立ち上がり、一張羅のトレンチコートを羽織った。
 

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