お話の、あるところ。

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

竹の子書房用:黒実 操

【サデスパー堀野という男企画用】『崩れた世界のはざ間から』・黒実操著

 
 昏(くら)い目をしたその男は、賽の河原を歩みゆく。
 積み石を避けるように足を運ぶのだが、徐々にその歩は乱れ――カラン。
 ついにひと山、崩してしまった。
 否、違う。
 石だと思っていたそれは、小さなカードの束だった。舞い散る、色鮮やかな紙、紙、紙。
 それを視認した男は、重金属製の心臓に血が通う感触を味わった。
 世界と同じ色の布で身体を覆った大鼠が、人語とは違う重厚な言葉を発する。男の脳内でそれは、盆暗(ぼんくら)な電波が紡ぐ辺境の方言へと変換された。
 紙切れを踏みしめ、指し示された方へと再び歩く。
 目の端に、チラチラと小さきものが映る。
 自然を模したもの。獣を模したもの。人間を模したもの。何かをを模したもの。そして異形のもの。
 それらと同じ数だけ、男の心臓が動いた。
 やがて男の目の前に、肉色の生きた山が現れる。
 大きな大きな――それは女の形をしていた。
 全裸で背を向けた恰好で、地に届く長い髪を頭頂近くで一つに纏めていた。
 男は躊躇うことなく、その長い髪を登り始める。女の襟足にそよぐ、和毛(にこげ)を一心に見つめて登った。
 その柔らかそうな項(うなじ)に手を伸ばしたときに、女の躰がバラバラに崩れて散った。
 ――あゝ。寄木細工のように無数の女が絡み合い、巨大なひとりの女が形作られていたのだ。
 無数の女は薄っぺらく、冷たく、硬い。
 その女の数だけ、男の心臓が鼓動した。
 墜ちてゆく男を、シルクハットの怪人が真っ赤なマントを広げて受け止め、そして猛毒の吐息で囁いた。
 ネェ。次は何を集めようか。
 

Comment
Trackback
Trackback URL
Comment form













管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

黒実 操

Author:黒実 操
「竹の子書房」に参加中。
www.takenokoshobo.com/index.php
無償版電子書籍がたくさん!

管理人ツイッター
http://twitter.com/kuromimigen

最新トラックバック
検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QRコード

Page Top
Powered by FC2 Blog | | Template Design by スタンダード・デザインラボ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。