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竹の子書房用 とよね

竹の子書房用【絵が先 古城の怪異】参加作品 古城の怪異〈1〉 著者:とよね

古城の怪異〈1〉 一章 あの夏


 1. 置き去りの少女

 この石牢のような部屋で、オルゼイ女史はもう何日も深い苦悩の中にいた。
 彼女は保護士だった。その来歴は彼女のふくよかな体の隅々にまで染みわたっており、手入れする間もなかったが為に荒れた髪や肌、黒ずんだ手足の爪であってさえ、彼女の誇りだった。
 保護士として働き始めてから今日まで、我が子と孤児たちとを分け隔てて接したことは、誓って一度もない。
 オルゼイ女史はもう幾度目かも分からぬ問いを自らに問う。
 自分の子であったら、ここに捨てていくような真似が出来ようか。
 答えは同じだった。

竹の子書房用 とよね

竹の子書房ハロウィン企画『猫とおしどりを連れた冒険』 とよね著

 1 

 罪人には時間がなかったが、おしどりを連れて行こうと思った。何せこれだけいるのだから一羽くらい構わないだろうと、池の畔へ駆けだせば、一斉に飛びたつおしどり達の中にいた、一羽だけ逃げも隠れもしない、どんくさい雄のおしどりを捕らえることに成功した。
「ホホホ、私はおしどりですよ」
 おしどりが言った。多くのおしどりがそうであるように、そのおしどりもトロリと眠たげな目をして腕の中で羽ばたいたが、逃げようとはしなかった。
「ホホホ、私を誘拐する気ですか?」
「そうだ。一緒に来い」
 罪人はバスケットにおしどりを押しこむと、上からタオルを何枚も重ねておしどりを隠した。
 おしどりは身震いをして、顔を、トロリとした眠たげな目をタオルの下から現した。

竹の子書房用 とよね

竹の子書房用【絵が先 百合の雪】参加作品 百合の雪〈5〉 著者:とよね

百合の雪〈5〉 三章 寒い星、忌み星(――2/2)


 ―4―

 石廊を走り抜け、木の扉の閂を外した。外側から、風が扉を押していた。強引に開けると、吹雪が顔を打った。
 夕暮れ、暗雲のはるか向こうに、光る塊が落ちていた。それは明かりを点す居住塔群であり、天を衝くほどのシラユリ機構、そして都市を網羅するケーブルバスの、蜘蛛の糸のような光。
 信じられないほど屋敷の奥深くに、セイジは迷いこんでいた。
 Winter-Lilyがどれほどの大きさの機械か、セイジには見当もつかない。小さなものとは思えないが、それにしても、これほど広大な屋敷を用意しなければ隠し切れないほどのものなのか。

竹の子書房用 とよね

竹の子書房用【絵が先 百合の雪】参加作品 百合の雪〈4〉   著者:とよね

百合の雪〈4〉 三章 寒い星、忌み星(――1/2)


「なぜ夜は暗いの、おじいちゃん?」
 星が投射された部屋に立ち、幼いユウリが尋ねた。素朴な疑問に、老人がスピーカーから笑い声をかけた。
『これを暗いというか、ユウリ。これだけの星を見ることなど、もはやありえないというのに』
「空に雪雲がなくても」と、ユウリ。「宇宙は広くて、星はもっとずっとたくさんあるんでしょう? なのに雲がなくてもこれだけしか光ってないの?」
『うん、もっともな疑問だな。宇宙が果てしなく広くて星がそこを埋め尽くしているのに、なぜ夜空一面が輝いて見えぬのか。お前はどう考える?』
 ユウリは体を天の川に彩られながら、真剣に考えた。

竹の子書房用 とよね

竹の子書房用【絵が先 百合の雪】参加作品 百合の雪〈3〉   著者:とよね

百合の雪〈3〉 二章 幻覚眠り姫(――2/2)

 ―4―

「誰?」
 マツリカは尋ねた。少年もまた、自分のおかれた状況を理解できず戸惑っているようだった。文字盤を見つめ、シャンデリアを見上げ、テーブルを挟んでマツリカの目を正面から見据えた。
「お前は人間か?」
「……そうだけど」
 誰か部屋に来ないかと願ったが、望みは薄そうだった。訊くべきことを訊いてしまった様子で、少年は途方に暮れている。
「あなたは誰?」
 もう一度尋ねた。
「その……名前は?」
「ユウリ」
「私はマツリカ。どこから来たの?」
 驚愕が去り、目の前の少年をただの人だと認める余裕ができた。どこから入って来たと訊くべきだったとマツリカは思った。
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黒実 操

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