お話の、あるところ。

スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

読みきり作品 吉野慧

投稿作品『一家心中』 著者:吉野慧

 金もないのに、子供をつくってしまった。悪いことをした。
「もっと美味しいものを食べさせてやりたかったですね」妻がそうつぶやいたようだった。もしかしたら、風が空を切る音がそう聞こえたのかもしれない。

読みきり作品 吉野慧

投稿作品『渦』 著者:吉野慧


 冷たい街の中を歩いていた。誰もかれも、人形のような顔をしている。人形のように、私の周りを無意味に行ったり来たりしている。
強い風が吹くと、すべて泡になって吹き飛ばされそうだった。枯れたような木も、ところ狭しと並ぶ看板も。
街は私だけになってしまいそうだった。私は恐ろしいものを見てしまったような気がした。

読みきり作品 吉野慧

投稿作品『イモリ』 著者:吉野慧

遠い雲と雲の隙間から、月の光がさしていた。

見ると、月は水辺の幾匹ものイモリを照らしている。
足と足とをくねくねさせ、汚い泥の底で折り重なって、苦しそうにもがいている。

読みきり作品 吉野慧

投稿作品『すなのつわもの』 著者:吉野慧

 彼らはあまりにも疲れていた。何日にも続く行軍にも疲れていたし、何よりも上級兵の怒号に疲れていた。
砂の混じった風が通るような不毛の大地を、何の不平不満も言わず歩き続ける事など、新兵にとっては耐えられることではなかった。
しかし、下手に言葉を発しても、残るものは、殴られて我が口腔から吹き出る血の味と、じゃりじゃりとした気味の悪い砂の感触だけだった。

読みきり作品 吉野慧

投稿作品『雨』 著者:吉野慧

この村では、雨が降ると大量の死体が溢れる。理由は知れない。

 私がこの村に移って来たばかりの時に、酷い豪雨が三日も続いた。
 雨があがると町の人たちは黙々と各家々から、ぐったりと魂を身体から洗い流されてしまった死体を担ぎ出して家の前に寝かせ始めた。
 直ぐに道の至るところで死体が寝はじめた。その眠り方がどれも安からで、生きて死体を担ぎ出している人間の方が精気の抜けた、死んだような顔つきをしていて、一体誰が死んでいて、誰が死んでいないのか、さっぱりわからない。死体が出された家は、どれもどんよりと歪んで見えた。
 暫くすると、真っ白な法衣を纏った坊主たちが現れて、寝ている死体をトラックに乗せてどこかへ走って行ってしまった。見送るものは誰もいなかった。
 
プロフィール

黒実 操

Author:黒実 操
「竹の子書房」に参加中。
www.takenokoshobo.com/index.php
無償版電子書籍がたくさん!

管理人ツイッター
http://twitter.com/kuromimigen

最新トラックバック
検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QRコード

Page Top
Powered by FC2 Blog | | Template Design by スタンダード・デザインラボ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。